人間ドックで「γ-GT（γ-GTP）が高い」と言われたあなたへ。お酒との関係は？お酒を飲まないのに上がることはある？

人間ドックや健診の結果で「γ-GT高値」「軽度の肝機能異常」と書かれて、「やっぱりお酒の飲みすぎ？」「私はお酒あまり飲まないんだけどな・・・」と不安になった方へ。

結論から言うと、γ-GTが少し高いだけで、すぐ命に関わる状況ということはまれです。ただし、「将来の肝臓トラブルや血管トラブルにつながりやすいサイン」の可能性があり、放置はおすすめできません。

人間ドック学会の判定基準

	A	B	C	D
γ-GT（U/L）	50以下	51〜80	81〜100	101以上

※　A：異常なし、　B：軽度異常、　C：要再検査・生活改善、　D：要精密検査・治療

この記事では、γ-GTについて、人間ドック・健診を担当する医師の立場からやさしく解説します。

γ-GTとは？何を見ている検査？

γ-GT（「γ-GTP」「GGT」とも呼ばれます）は、主に

肝臓
胆道（胆管）

の細胞に含まれる酵素です。

肝臓や胆道に負担がかかったり、胆汁の流れが悪くなったりすると、血液中に漏れ出て数値が上がります。

なぜγ-GTは上がるのか（お酒だけではない）

人間ドックでよく見かける原因をざっくり挙げると、次のようなものがあります。

日常的な飲酒（量が多い、休肝日が少ない）
脂肪肝（お酒を飲まない人の MAFLD（旧：NAFLD）も含む）
胆石や胆管の狭窄など、胆汁の流れが悪くなる病気
薬・サプリメント・漢方などによる肝障害

つまり、「γ-GT ＝お酒だけの検査」ではなく、「生活習慣全体の警告灯」と考えるのが大事です。

γ-GTとアルコールの関係

γ-GTが高く、医師から「お酒を控えましょう」と言われた方も多くいらっしゃると思います。でも、「私はそんなにお酒飲まないのにな・・・」と思った方もいらっしゃるでしょう。この章では、γ-GTとアルコールの関連についてまとめたいと思います。

γ-GTは、昔から「過度のアルコール摂取の間接的なマーカー」として使われてきました。多くの研究で、飲酒量が多い集団ほどγ-GTが高いことが報告されています。
断酒・減酒をするとγ-GTが下がっていく、という研究も複数あります。

一方で、

γ-GTは「お酒以外の要因（脂肪肝・薬など）」でもかなり上がってしまう
そのため、必ずしも「γ-GTが高い＝大量飲酒」というわけではない
逆に、飲酒が多くてもγ-GTがあまり上がらない人も一定数いる

ことがわかっています。

そのため、「γ-GTはアルコールのマーカーとして感度は悪くないが、特異度が低く、これだけで飲酒量を断定するのは難しい」という位置づけになっています。

ただ、「禁酒・減酒のモニタリング」「自己申告が怪しいときの客観的な情報」としては今でも広く使われていて、お酒の影響を反映しやすい検査の一つであることは間違いありません。

γ-GTの高さをどう読むか

健診結果の読み方としては、次の3点が重要です。

どのくらい高いか（軽度〜高度）
ALT・AST・ALP・ビリルビンなど他の肝・胆道系酵素はどうか
最近の変化（じわじわ上がっているか・急に悪化したか）

「γ-GTが少し高い＋他の項目はほぼ正常」の場合、

飲酒習慣
脂肪肝
薬やサプリ

などの生活要因が背景にあることが多いです。

一方で、

γ-GTがかなり高い（数百レベル）
ALPやビリルビンも高い（胆汁うっ滞パターン）
右上腹部の痛み・黄疸・強いかゆみなどの症状がある

といった場合は、胆石で胆管が詰まっている、胆道系の病気がある、などの可能性もあり、早めの精査が必要になります。

さらに、最近の研究では、γ-GTが「基準値内でも高め」の人では、心血管病のリスクが高いという報告も複数あります。「少し高め」が続いている場合も、軽く見ずに生活を立て直すサインと捉えるのが良さそうです。

こんなときは受診をおすすめ

人間ドックの結果を見て、次のような場合は自己判断で様子を見るより、内科・消化器内科で一度相談するのがおすすめです。

・γ-GTが明らかに高い
・γ-GTだけでなく、ALPやビリルビン、AST/ALTも一緒に高い
・黄疸（目や皮膚が黄色い）、尿の色が異常に濃い、右上腹部の痛み、かゆみなどの症状がある
・去年まで正常〜軽度だったのに、今年急に大きく上がった
・飲酒量をうまく説明しづらい／家族から「飲みすぎ」と言われるレベルの飲酒が続いている

健診結果（過去数年分があればベスト）と、
・お酒の量（1週間分）
・飲んでいる薬・サプリの一覧
・体重変化のメモ
を一緒に持っていくと、診察がスムーズです。

今日からできるγ-GT対策

1. 体重・お腹周りを少しでも落とせないか

体重を5〜10％減らすと、脂肪肝が改善する可能性があります。
いきなり大きく痩せるより、「まずは5%→次は7%→それも達成できたら10%」のように段階的に体重を減らしていきましょう。

2. お酒の量・飲み方を振り返る

「毎日少しずつ」よりも「休肝日をしっかり作る」ことが大切です。
日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス2杯程度を目安に、それ以上の日を減らしていくイメージです。

3. 薬・サプリを飲みすぎていないか

解熱鎮痛薬を長期的に飲む
正体のよく分からないサプリを複数併用する

といったことがあると、知らないうちに肝臓に負担をかけることがあります。心当たりがあれば、医師に相談しながら服用するものを整理していきましょう。

4. 運動習慣はどうか

脂肪肝の改善を目指すために、30〜60分、週3〜4回の有酸素運動を推奨します。
最初から完璧を目指さず、徐々に運動習慣を取り入れていきましょう。

まとめ

γ-GTは、肝臓・胆道のダメージや胆汁の流れ、お酒、脂肪肝、薬など、さまざまな影響を受ける酵素で、「お酒だけの検査」ではありません。
お酒との関係については多くの研究があり、長期間の飲酒量が多い人ほどγ-GTが高くなりやすいことが示されています。ただし、肥満や脂肪肝でも上がるため、「γ-GTだけで大量飲酒を断定」はできません。
軽度の上昇で他の検査はほぼ正常、自覚症状なしの場合、すぐ命に関わることはまれですが、「生活習慣からくるじわじわ型のサイン」であることが多く、体重・飲酒・運動・薬やサプリの見直しが重要です。
γ-GTがかなり高い、他の肝・胆道系の酵素も高い、黄疸や強いだるさなどの症状がある、急に数値が悪化した、といった場合は、早めに内科・消化器内科を受診して原因を調べましょう。
γ-GTも他の肝機能と同様、1回の値より「過去数年の変化」がとても重要です。健診結果は捨てずに保管し、「じわじわ上がっていないか」をときどき振り返る習慣をつけておくと安心です。