人間ドックで「ALPが高い」と言われたあなたへ


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はじめに:人間ドックで「ALPが高い」と言われたあなたへ

人間ドックの結果を見て、「ALPが基準値を少し超えています」とコメントされると、
「肝臓が悪い?がん?」と不安になりますよね。

結論から言うと、

ALPが少し高いだけで、すぐに重い病気を疑う必要があるケースは多くありません。

一方で、ALPが高いと肝臓・胆道や骨の病気のサインになることもあるので、

  • どのくらいの高さなのか
  • ほかの血液検査と合わせてどうなのか
  • 症状はあるか

などと合わせて考えることが大切です。

ALPは人間ドック学会の判定区分が定められていません。この点については後ほど解説します。

この記事では、ALPについて、人間ドック・健診を担当する医師の立場からやさしく解説します。


ALPってそもそも何の検査?

ALPはどこで作られる酵素?

ALP(アルカリホスファターゼ)は、

  • 肝臓・胆管
  • 小腸
  • 妊娠中の胎盤 など

に多く存在する「酵素」の一つです。

血液検査では、これらの臓器から血液中に流入してきたALPの量を測っています。

ALPの値が示しているもの

ALPの値そのものは、

  • 「肝臓から来ているALP」
  • 「骨から来ているALP」

などをまとめた“合計値”です。

そのため、

  • 肝臓・胆道のトラブルで上がることもあれば
  • 骨の病気や骨の代謝が活発な状態で上がることもある

という、少し“意味が広い”検査だと思ってください。


ALPが高いときに考えられること

肝臓・胆道系のトラブル

ALPが高くなる原因の1つに、胆汁の流れがうまくいっていない状態があります。これは「胆汁うっ滞」と呼ばれます。

胆汁の流れについて解説しました。

胆汁の流れは、ものすごくざっくり言うと「肝臓で作られて、胆のうにいったん貯められ、脂っこいものを食べたときに腸へ流れていく」という仕組みです。胆汁の流れる道を「胆道」と言います。

まず、胆汁は肝臓が24時間ずっと作り続けています。中身は、脂肪の消化を助ける胆汁酸や、古くなった赤血球のカスであるビリルビン、コレステロールなどが混ざった液体です。肝臓で作られた胆汁は細い管を通って流れていき、その多くはいったん「胆のう」という袋に運ばれてたまります。胆のうは、いわば胆汁のタンク兼、濃縮装置のような役割で、ここで水分が少し抜かれ、より濃い胆汁としてストックされます。

食事、とくに脂っこいものを食べると、小腸の入り口あたり(十二指腸)から「今、脂肪がきたから胆汁ほしいよ」という合図が出ます。その合図を受けて胆のうがキュッと縮み、貯めておいた胆汁をぎゅっと押し出します。胆汁は再び細い管(胆のう管〜総胆管)を通って十二指腸に流れ込み、そこで脂肪を細かく分解して、消化・吸収を助けます。

こうして一度腸に流れた胆汁の成分の多くは、そのまま捨てられるわけではなく、小腸の奥の方で再び体に吸収されて肝臓へ戻り、また胆汁として再利用されていきます。

まとめると、肝臓が作った“脂肪処理液”を胆のうに貯めておき、必要なタイミングで小腸に流して使い、さらにその一部を再利用している——これが胆汁の流れのおおまかなイメージです。

例えば、

  • 肝内胆管の炎症
  • 胆石や腫瘍による胆管の閉塞
  • 一部の薬剤性肝障害

などでは、ALPやγ-GTPが一緒に高くなることが多くあります。

同じ結果表の中で、

  • AST(GOT)
  • ALT(GPT)
  • γ-GTP
  • 総ビリルビン

なども合わせて上がっている場合は、
肝臓・胆道系のトラブルを疑って、内科(消化器内科)での評価を考えてよい場面です。

骨の代謝が活発な状態

ALPは骨を作る細胞(骨芽細胞)でも多く作られます。

  • 成長期の子ども・思春期
  • 骨折
  • 骨の病気(骨Paget病、骨転移など)

では、骨由来のALPが高くなることがあります。

成人の人間ドックで「ALPが高め」と言われた場合でも、

  • 他の肝機能が全く正常
  • 骨の痛みや変形もない

といった状況では、骨の代謝や体質的な要因などを含めて総合的に判断することになります。

必要に応じて、

  • 「ALPアイソザイム」という、ALPの出どころを調べる検査
  • 骨のレントゲンや骨密度検査

などで詳しく調べることもありますが、
人間ドックの場面では、まずは問診や他の数値との組み合わせを見て判断されることが多いです。

体質的な要素

ALPの値は他の検査項目と比べて個人差が大きいことが知られています(特に血液型に影響されます)。また、閉経後の女性ではやや高くなる傾向があります。このように、体質的な要素が大きいので、人間ドック学会では判定基準の数値を定めていないのです。

そのため、

  • 軽度の上昇
  • 自覚症状なし
  • 他の肝機能はすべて正常

という場合には、まずは少し間隔をあけて再検査してみる、という対応になることも珍しくありません。

ALPは人それぞれ「ふだんの高さ」が決まっているので、他の人の値と比較するよりも、長い目で変化を追ってALPが急に上がらないかを観察していくことが大事なのです。


ALPが低いときに考えられること

人間ドックでは「ALP高値」のコメントはよく見かけますが、逆にALPが低い場合もときどきあります。

ALP低値の背景として言われるものには、

  • 亜鉛不足
  • 甲状腺機能の低下(甲状腺機能低下症)
  • 先天性の代謝異常(低ホスファターゼ症など、まれな病気)

などがあります。

多くの場合は症状や他の血液検査と組み合わせて判断しますし、「ALPだけ少し低い」ことが病的であることはほぼないのですが、長期にわたって明らかに低値が続く場合は、内科受診が必要です。


人間ドック結果の見方:ALP以外にどこを見る?

ALPは単独で判断するより、ほかの項目との組み合わせがとても重要です。

特に一緒に見てほしいのは次のような項目です。

  • AST(GOT)、ALT(GPT)
    → 肝細胞そのもののダメージを反映しやすい
  • γ-GTP
    → お酒・薬・胆道系のトラブルなどで上がりやすい
  • 総ビリルビン
    → 黄疸(おうだん)の有無の目安
  • ALPの“上がり具合”
    → 基準値のわずかな超え方なのか、明らかに高いのか

ざっくりとした目安としては、

  • ALP以外は正常で、ALPだけがほんの少し高い
    → 一度の検査だけでは何とも言えず、経過観察になることも
  • ALPとγ-GTPが一緒に高い
    → 肝臓・胆道系に異常がある可能性がある
  • AST・ALTも明らかに高い
    → 肝炎など、肝細胞のトラブルが起きていないかをチェックした方がよい

といったイメージです。


どんなときに受診した方がいい?

次のような場合には、受診が必要と考えます。

  • 基準値を大きく超えるALP高値が出ている
  • ALPだけでなく、AST/ALT や γ-GTP も高い
  • 黄疸(目や皮膚が黄色い)、尿の色が濃い
  • 右上腹部の痛みや違和感が続く
  • 体重が急に減ってきた、強い倦怠感がある
  • 骨の痛みや変形、原因不明の骨折などがある

一方で、

  • ALPが基準値を少し超えているだけ
  • 他の検査は正常
  • 自覚症状も特にない

という場合には、

  • 医師と相談のうえで、数ヶ月〜1年後の再検査で経過を見る
  • その間に、生活習慣(食事・運動・飲酒など)を整える

という方針になるケースもたくさんあります。

まとめ

「ALP高値」という文字だけを見ると、

  • 肝臓が悪いのでは?
  • がんや重い病気のサインでは?

と、つい最悪のケースを想像してしまいがちです。

ただ、実際の現場では、

  • 軽度のALP高値はよく見られる
  • 体質的な範囲のことも多い
  • 他の検査や症状と合わせて総合的に判断する

というケースがほとんどです。

  • ALP以外は大きな異常がなく
  • 医師からも「まずは様子をみましょう」と言われている

のであれば、必要以上に不安になりすぎる必要はありません。



このサイト「さすらい先生の予防医療ナビ」では、人間ドックや健診でよくある所見について、

  • どこまで心配すべきか
  • どこからは病院に相談した方がいいか
  • 日常生活で何を整えればいいか

を、現場目線でお伝えしていきます。

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