はじめに
人間ドックや健診の結果で、
- 「ALT高値」
- 「GPTが基準値をこえています」
- 「軽度の肝機能異常を認めます」
と書かれているのを見て、不安になった方へ。
結論から言うと、ALTが少し高いだけの場合、多くはすぐ命にかかわるような状態ではありません。
ただし、放っておくと「将来の肝臓トラブル」につながることもあり、軽視はできません。
人間ドック学会の判定基準
| A | B | C | D | |
| ALT(U/L) | 30以下 | 31〜40 | 41〜50 | 51以上 |
※ A:異常なし、 B:軽度異常、 C:要再検査・生活改善、 D:要精密検査・治療
この記事では、ALTについて、人間ドック・健診を担当する医師の立場からやさしく解説します。
ALTってそもそも何の数字?
ALT(エーエルティー)は、昔は「GPT」と呼ばれていた酵素です。主に肝臓の細胞の中に多く含まれていて、肝臓がダメージを受けると血液中に漏れ出てきます。
肝臓の細胞が傷つく
→中のALTが血液中に出る
→採血でその量を測る
→「ALTが高い=肝臓の細胞が傷ついているかもしれない」というサイン
というイメージです。
結果表のなかでALTの上に表示されているAST(GOT)も似たような酵素なのですが、ASTは心臓や筋肉などにも多く、「肝臓に特に強く結びついている」のはALTと覚えておくとよいです。
ALTが高くなる原因として多いもの
人間ドックでよく見かける「ALT高値」の背景として、多いのは次のようなものです。
- 脂肪肝(お酒を飲まない人も含む)
- 内臓脂肪・メタボ・体重増加などとセットで起こりやすい
- アルコール性肝障害
- 日常的な飲酒量が多い場合
- 薬やサプリメントによる肝障害
- 抗菌薬、解熱鎮痛薬、サプリ、漢方などでもALTが上がることがあります。
- ウイルス性肝炎(B型・C型など)
- 検診でのスクリーニング項目に含まれていることも多いですね。
- その他の肝臓の病気
- 自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎などの疾患があります。
また、検査前の激しい運動でもALTが上がることがあります。
ALTが高い場合、パターンが大事です
健診結果でALTが高いと言われたときに大事なのは、次の3つです。
- どのくらい高いのか(軽度〜高度)
- 一時的な上昇なのか、毎年高いのか
- 他の項目(AST、γ-GTP、ビリルビンなど)も一緒に高いかどうか
ざっくりとした目安としては、こんなイメージになります。
- ALTが基準値を少し超える程度で
- 他の肝機能がほぼ正常
- 去年・一昨年は正常〜軽度高値
といった場合、多くは脂肪肝や飲酒を含む生活習慣が背景であることが多いです。
逆に、
- ALTがかなり高い(100以上〜数百など)
- ASTも一緒に大きく上がっている
- 黄疸(皮膚や白目が黄色い)、強いだるさ、食欲が湧かないなどの症状がある
という場合は、急性の肝炎や、重い肝障害の可能性を考えて、早めの受診が必要になります。
今日からできる生活習慣のチェック
ALTが上がる背景として生活習慣の要素は大きいと考えます。人間ドックでB判定やC判定だった方は、次のようなポイントに気をつけてみてください。
1. 体重・お腹周りを少しでも落とせないか
- 体重を5〜10%減らすと、脂肪肝が改善する可能性があります。
- いきなり大きく痩せるより、「まずは5%→次は7%→それも達成できたら10%」のように段階的に体重を減らしていきましょう。
2. お酒の量・飲み方を振り返る
- 「毎日少しずつ」よりも「休肝日をしっかり作る」ことが大切です。
- 日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス2杯程度を目安に、それ以上の日を減らしていくイメージです。
3. 薬・サプリを飲みすぎていないか
- 解熱鎮痛薬を長期的に飲む
- 正体のよく分からないサプリを複数併用する
といったことがあると、知らないうちに肝臓に負担をかけることがあります。心当たりがあれば、医師に相談しながら服用するものを整理していきましょう。
4. 運動習慣はどうか
- 脂肪肝の改善を目指すために、30〜60分、週3〜4回の有酸素運動を推奨します。
- 最初から完璧を目指さず、徐々に運動習慣を取り入れていきましょう。
受診するときに持っていくと役立つもの
もし内科や消化器内科を受診する場合は、次のような情報を一緒に持っていくと診察がスムーズです。
- 過去数年分の健診結果(ALTだけでなくAST、γ-GTP、脂質、血糖なども)
- 普段飲んでいる薬やサプリのリスト
- 普段の飲酒量(種類・量・頻度のメモ)
- 体重の変化
医師は「今の数値」だけでなく、時間とともにどう変化してきたかを見ながら判断します。人間ドックや健診の結果報告書は、ぜひ捨てずにとっておいてください。
まとめ
- ALTは「肝臓の細胞が傷んでいないか」をみる数字で、ASTよりも肝臓に特化した指標です。
- 軽い上昇だけで症状もなく、他の肝機能もほぼ正常なら、多くは脂肪肝や飲酒・生活習慣が背景にある「じわじわ型」で、すぐ命に関わることはまれです。
- 一方で、ALTが100以上とかなり高い/黄疸やだるさなどの症状がある場合は、急性肝炎など重篤な病気も考えられるため、早めの受診が必要です。
- 「様子見でいい」と言われたケースでも、体重・お腹まわり・お酒・運動・薬やサプリなど生活習慣を見直すことが、将来の肝臓疾患や動脈硬化の予防につながります。
- ALTに限らず人間ドックの結果は一回の値だけでなく、過去の健診結果との“変化のしかた”がとても重要です。結果は捨てずに保管し、「急に悪くなっていないか」「じわじわ上がっていないか」を確認していく必要があります。

このサイト「さすらい先生の予防医療ナビ」では、人間ドック・健診でよくある所見について、
- 「どこまで心配すべきか」
- 「どこからは病院に相談した方がいいか」
- 「日常生活では何を整えればいいか」
などを、現場目線で解説していきます。
