健診結果で、
- 「HDLコレステロールが低めです」
- 「善玉コレステロールが少ないです」
と書かれると、「悪玉(LDL)は分かるけど、善玉が少ない場合はどう考えればいいの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ざっくり言うと、
- HDLコレステロールは「血管のお掃除係」
- 低すぎると、将来の心筋梗塞・脳梗塞のリスクが上がる要注意サイン
- ただし、「すぐ何か起こる」という意味ではなく、長い目で見たリスクの話
ということです。
人間ドック学会の判定基準
| A | B | C | D | |
| HDLコレステロール(mg/dL) | 40以上 | (該当なし) | 30〜39 | 29以下 |
※ A:異常なし、 B:軽度異常、 C:要再検査・生活改善、 D:要精密検査・治療
この記事では、HDLコレステロールについて、人間ドック・健診を担当する医師の立場からやさしく解説します。
HDLコレステロールってそもそも何?
「善玉」と呼ばれる理由
コレステロールは、からだの中で細胞膜やホルモンの材料になる大事な脂質です。
それを血液中で運ぶ「運び屋」のうちの一つが HDL(high-density lipoprotein) です。
HDLの主な役割は、
- 余ったコレステロールを血管の壁などから回収して
- 肝臓に運び、体から出していく
というものです。この“回収作業”によって、動脈硬化(血管の老化)が進みにくくなるため、「善玉コレステロール」と呼ばれています。
LDLとの違い
一方で、いわゆる「悪玉」の LDLコレステロール は、
- 肝臓から全身にコレステロールを届ける担当です。
LDLが多すぎると、コレステロールが血管の内側にたまり、動脈硬化を進めてしまうことが問題になります。
- LDL:増えると血管の「詰まり」の材料を増やす
- HDL:余った分を回収してくれる“お掃除係”
というイメージで捉えておくと分かりやすいと思います。

健診結果のHDL値はどう読む?
「低HDL」の目安
日本のガイドラインなどでは、HDLコレステロール 40 mg/dL 未満を「低HDLコレステロール血症」として、動脈硬化のリスク因子の一つに位置づけています。
多くの健診機関でも、
- HDL 40 mg/dL 未満:要注意(リスク因子)
- HDL 40 mg/dL 以上:ひとまず“低すぎない”ゾーン
という扱いをしていることが多いです。
「高いHDL」は基本的には良いけれど…
一般的には、
- HDLが高め(例えば 50 mg/dL 以上)だと、心血管病のリスクは低くなりやすい
という方向のデータが多く、「HDLは高いほどよい」と説明されることもあります。
ただし、“非常に高い(90や100を超える)”HDLでは、逆に心血管リスクが上がるという報告もあります。
ここまで来ると専門的な話になりますし研究によっても結果にばらつきがあり確定的なことはまだ言えませんので、読者の皆さんは
- 「少し高め」→ 基本的には良いサイン
- 「異常と言われるほどの高値」→ 他の検査や動脈硬化リスクも含めて、医師と相談して評価
くらいのイメージで大丈夫です。
HDLが低いときに考えられること
将来の心筋梗塞・脳梗塞リスクの「1つのサイン」
HDLコレステロールが低い人は、
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 突然死 など
のリスクが高いことが、多くの研究で示されています。
ただし、「HDLが低い=すぐに何か起こる」と思う必要はなく、他の危険因子(高血圧・糖尿病・喫煙・家族歴など)も“積み重なったとき”にリスクが上がりやすくなると考えてください。
生活習慣との関係
HDLを低くしやすい要因として、例えば次のようなものが知られています。
- 喫煙
- 運動不足
- 肥満・内臓脂肪
- 高トリグリセリド血症(中性脂肪が高い状態)
- 糖尿病
こういった要素が重なっていると、
- HDLが低く
- LDLや中性脂肪も高くなり
- 血圧や血糖も悪化しやすい
という状態になっていきやすくなります。
体質・遺伝の影響
- 家族にもHDLの低い人が多い
- 若い頃からずっとHDLが低い
という場合、体質や遺伝的な要素も関係している可能性があります。
この場合でも生活習慣を整えていくに越したことはありませんが、必要に応じて医療機関で詳しい評価を受ける必要があることもあります。
どんなときに受診した方がいい?
人間ドック結果を見て、次のような場合は内科で相談することをおすすめします。
- HDLが 40 mg/dL 未満で、
- 高血圧
- 糖尿病・耐糖能異常
- 喫煙
- 肥満(特にお腹周り)
- 家族に心筋梗塞・脳梗塞の人がいる といった危険因子がいくつか当てはまる
- HDLが低く、かつ LDL・中性脂肪・血糖・血圧など他の項目も高め
- HDLが異常なほど高く、医師からも「少し詳しく見た方がいいかも」と言われた
- 以前から「脂質異常あり」と言われていたが、きちんと相談できていない
日常生活に取り入れてほしいこと
喫煙をやめる
- 喫煙はHDLを下げる代表的な要因の一つで、禁煙によりHDLが上昇することが多くの研究で示されています。
- LDLだけでなく「HDLが低い+喫煙」という組み合わせは、動脈硬化リスクを大きく押し上げます。
- ただし、禁煙後には体重が増える傾向にありますので、体重の変化には注意していきましょう。
有酸素運動を取り入れる
- 週150分程度の「やや早歩き」レベルの有酸素運動は、HDLの改善や、中性脂肪の低下、血圧・血糖の改善につながりやすいとされています。
- 特別なスポーツでなくても、
- 早歩き
- 自転車
- 階段を使う などで効果が期待できます。
体重・お腹周りを整える
- 内臓脂肪が多いと、HDLが低くなり、中性脂肪や血糖も悪化しやすくなります。
- 体重を少しずつ減らし、ウエストを改善していくことで、HDLを含めた“脂質のバランス”がよくなることが期待できいます
食事の工夫
- 揚げ物・脂身の多い肉・菓子パン・スナック菓子・甘い飲み物などを、少しずつ減らしていく
- 魚(特に青魚)、ナッツ類、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を含む食品を取り入れる
- 野菜・海藻・きのこ・大豆製品を増やして、全体のバランスを整える
これらの食習慣がHDLを積極的に増加させるというわけではありませんが、血管にやさしい食事と考えて頂いて結構です。
お酒について
適量の飲酒でHDLが上がるという報告もありますが、「HDLを上げるためにお酒を飲む」ことは推奨されていません。
- すでに飲む習慣がある人は、「ほどほど」を心がける
- 飲まない人がわざわざ飲み始めるメリットは乏しい
と考えるのが一般的です。
まとめ
- HDLは「善玉」コレステロール
血管の壁などにたまった余分なコレステロールを回収し、動脈硬化を防ぐ方向に働きます。 - HDLが低い(40 mg/dL未満)は、心筋梗塞・脳梗塞のリスク因子の一つ
それ自体で今すぐ何か起こるわけではないが、他の危険因子と積み重なると、将来の血管リスクが上がっていきます。 - HDLが「ある程度高い」ことは、多くの人では良いサイン
- 次のような人は一度受診がおすすめ
- HDL < 40 mg/dL かつ、高血圧・糖尿病・喫煙・肥満・心筋梗塞の家族歴などの危険因子がある
- HDL低値に加え、LDL・中性脂肪・血糖・血圧も高め
- HDLが異常なほど高く、医師からも「評価が必要」と言われている
- 日常生活に取り入れたいコレステロール対策
- 禁煙
- 週150分程度の有酸素運動
- 体重・お腹周りを少しずつ整える
- 揚げ物・菓子・甘い飲み物を減らし、魚や大豆・野菜・ナッツなどを増やす
- お酒は「HDLのために飲む」のではなく、あくまでほどほどに
- HDLの数字だけを見て一喜一憂しすぎないことが大事
LDL、血圧、血糖、喫煙、家族歴などと合わせて、動脈硬化のリスク全体について気をつけておくことが将来につながります。

このサイト「さすらい先生の予防医療ナビ」では、人間ドック・健診でよくある所見について、
- 「どこまで心配すべきか」
- 「どこからは病院に相談した方がいいか」
- 「日常生活では何を整えればいいか」
などを、現場目線で解説していきます。
