人間ドックの結果を受け取って、「喫煙が体に良くないことはわかっている、でもなかなかやめられない」というもどかしさを感じている方は少なくないと思います。
この記事では、自力での禁煙がなぜ難しいのか、医療機関での禁煙治療がどのようなものか、そして忙しい方にとって選択肢になりうるオンライン禁煙外来について、人間ドックに従事している医師の視点からお伝えしていきます。
喫煙が体に及ぼす影響
喫煙による健康への影響は、全身の様々な臓器に及びます。
- 血管・循環器系:喫煙は動脈硬化の進行に関与する要因の一つとされ、心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇との関連が指摘されています。
- 血液:一酸化炭素への慢性的な曝露により、体が代償的に赤血球を増やす反応が起こることがあり、血液がやや粘度の高い状態になりやすいとされています。
- 呼吸器:慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、肺がんのリスク上昇との関連が知られています。
- 消化器:胃潰瘍の治りにくさや、一部のがんとの関連が指摘されています。
これらのリスクは、喫煙を続けた年数や本数の蓄積によって積み上がっていくという性質があります。
禁煙は、その蓄積を止めるという意味で、開始した時点から意味を持つ対策になります。
なぜ自力での禁煙は続きにくいのか
喫煙を続けてしまう背景には、単純な「意志の弱さ」では説明しきれない仕組みがあります。
タバコに含まれるニコチンは、脳内の受容体に結合し、快感や落ち着きに関わる神経伝達物質の放出を促す作用があります。喫煙を繰り返すうちにこの受容体の働きが変化し、「ニコチンが切れると集中力が低下したりイライラする」といった離脱症状が現れるようになります。これが「ニコチン依存症」と呼ばれる状態です。
つまり、禁煙が続かないのは、性格の問題というより、「脳の受容体レベルで起きている生理的な変化に対抗しなければならない」という、そもそも難易度の高い課題に取り組んでいるから、というのが実態に近いといえます。
医療機関での禁煙治療とは
現在、日本では一定の条件を満たすと、健康保険を使って禁煙治療を受けられる制度があります。
- ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)で5点以上の判定が出ていること
- 35歳以上の場合、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること(35歳未満はこの条件が不要)
- 直ちに禁煙する意思があること
- 禁煙治療を受けることについて文書で同意していること
条件を満たすと、12週間で5回の診療からなる標準プログラムを、保険適用の自己負担割合で受けられます。
治療では、ニコチンパッチや、ニコチンを含まない飲み薬(バレニクリン等)といった禁煙補助薬が用いられ、離脱症状を和らげながら禁煙を進めていく形になります。
「オンライン禁煙外来」という選択肢
「忙しくて通院する時間が取れない」「通院していることを身近な人に知られたくない」といった理由で、禁煙治療を先延ばしにしてしまう方も少なくありません。
こうした方にとって、オンラインで診療を完結できる禁煙外来は、通院のハードルを下げる選択肢の一つになります。
オンライン禁煙外来のメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- オンライン診察のため、通院の移動時間がかからない
- 薬が自宅に配送されるため、薬局に立ち寄る手間が発生しない
- 一定の要件を満たした場合は、保険適用の禁煙治療(12週間・計5回)を初回から最終回までオンライン診療で完結させることが可能です。
タバコを1日1箱吸う方の場合、禁煙治療にかかる費用は、数ヶ月分のタバコ代程度で収まります。
治療を完了して禁煙に成功すれば、翌月以降のタバコ代は浮くため、わずか数ヶ月で治療費の元が取れる計算です。健康面はもちろん、家計にとってもメリットの大きい選択肢です。
まとめ
- 禁煙が続かないのはあなたの意志の弱さではなく、ニコチンによる脳内の生理的な変化によるところが大きいです。
- 喫煙は血管・血液・呼吸器・消化器など、複数の臓器のリスクに関わります。
- 一定の条件を満たせば、保険適用で禁煙治療を受けられます。
- 医療機関でのサポート(薬物療法)を使うことで、自力よりも高い成功率が報告されています。
- オンライン禁煙外来は、通院のハードルを下げる現実的な選択肢の一つになります。

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