尿潜血陽性と言われたら|自覚症状がなくても放置してはいけない理由と受診の目安【医師解説】

人間ドックの結果表で「尿潜血(±)」「尿潜血(+)」といった表記を見つけて、「痛くもかゆくもないのに、これは何なのだろう」と感じた方も多いと思います。
尿潜血は自覚症状がないまま見つかることがほとんどの所見であり、「異常と書かれているけど、とりあえず様子を見ていいのかな」と思ってしまいがちな項目です。
この記事では、尿潜血が何を意味する検査なのか、考えられる原因、そしてどのような場合に受診を検討すべきかを人間ドックに従事している医師の視点からお伝えします。

人間ドック学会の判定区分

ABCD
尿潜血(−)(±)(+)(2+)以上

※ A:異常なし、 B:軽度異常、 C:要再検査・生活改善、 D:要精密検査・治療
※ 尿蛋白が(+)かつ尿潜血が(+)である場合は,尿蛋白をD判定とします。
※ 判定結果は、施設ごとや判定医ごとの基準、問診内容や過去の数値によって変わることがあります。


目次

尿潜血検査はどのような検査か?

血尿とは、「尿のなかに一定以上の赤血球が含まれていること」です。

そして、尿が血尿かどうかを調べる検査としては、尿潜血検査と尿沈渣検査があります。

尿潜血検査

尿潜血検査は、試験紙を尿に浸し、尿の中に赤血球(正確にはヘモグロビン)が混じっていないかを調べる検査です。「(−)」(陰性)、「(±)」(微量)、「(+)」「(2+)」「(3+)」(陽性)という5段階で結果が示され、「(−)」(陰性)のみが正常です。

ここで重要なのが、血尿には2つの種類があるという点です。

  • 肉眼的血尿:尿そのものが鮮赤色〜赤褐色に見える、人間の目で見てわかる血尿
  • 顕微鏡的血尿(尿潜血):尿の色は普通の黄色〜透明のままで、顕微鏡レベルでしか赤血球が確認できない血尿

人間ドックで「尿潜血陽性」と判定されるのは、この顕微鏡的血尿にあたりますので、自分では気付けない血尿を検出できるという検査になっています。

なお、試験紙による尿潜血検査は簡易的な検査であり、色の変化のみで判定するため、実際には血液が混じっていない「偽陽性」が一定数含まれます。つまり、この検査だけでは、「本当に赤血球が混じっているのか」が分かりません。そこを調べるのが、次に説明する「尿沈渣検査」です。

ビタミンCを含むサプリメントや飲料をよく摂取している方は、尿検査の前は2~3日中止しましょう。
ビタミンCは強い還元作用があるため、尿試験紙の中の酸化反応によって発色する尿潜血検査では、その作用が弱められ、偽陰性になることがあります。

尿潜血検査で偽陽性になる原因としては、精子の混入、ポピドンヨードなどの酸化剤の混入、pH>9のアルカリ尿、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿などが挙げられます。

尿沈渣検査

尿沈渣検査は、尿を遠心分離機にかけて底に沈んだ成分を取り出し、顕微鏡で観察する検査です。
尿潜血検査が「ヘモグロビンという物質の有無」を化学的に調べるのに対し、尿沈渣検査は「赤血球そのものの数・形」を実際に目で見て確認する、より詳細な検査だといえます。

尿沈渣で確認できることには、赤血球の数・形のほかに、次のようなものがあります。

  • 白血球・細菌の有無:膀胱炎など感染症の可能性を確認する
  • 円柱の有無:腎臓の尿細管の中で形成される特殊な構造物で、種類によっては腎臓の病気の手がかりになる

尿沈渣で赤血球の「形」を見ることには重要な意味があります。
腎臓の糸球体・尿細管という場所を通り抜けてきた赤血球は、通過の過程で歪んだり変形したりする(変形赤血球)ことが知られており、これが多く見られる場合は、腎臓自体に原因がある「糸球体性血尿」の可能性が考えられます。
一方、赤血球の形がきれいなまま保たれている場合は、尿道や膀胱など、腎臓より下流の部位からの出血(非糸球体性血尿)が疑われます。

人間ドックでは、施設やプランによって、尿潜血のみを実施している場合と、尿潜血と尿沈渣を両方実施している場合があると思います。
どちらの場合でも、尿潜血陽性が確認された場合、精密検査の段階では尿沈渣検査を実施するのが基本的な流れです。 

尿潜血陽性の原因として考えられるもの

まず、一時的に尿潜血が陽性になる原因としては、月経、激しい運動の後、外傷、直近の泌尿器科的処置などが挙げられます。

そうでない場合、何かしらの病気が原因で尿潜血陽性になっていることが考えられますが、そのような病気は多くあり、大きく言うと、腎臓の病気(糸球体疾患)と泌尿器系の病気に分けられます。

腎臓の病気(糸球体疾患)としては、IgA腎症、糸球体腎炎、ループス腎炎、ANCA関連腎炎、Alport症候群などが挙げられ、これらは腎臓内科で扱うものです。

泌尿器系の病気としては、尿路系の感染症(膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎)、尿路結石などが挙げられますが、見逃してはいけないのが尿路系の”がん”です。
つまり、「尿路上皮がん(膀胱がん、尿道がん)」や「腎がん」、「前立腺がん」を見逃したくないということになります。

医療機関への受診を推奨する基準

以下に該当する場合は、次回の健診まで様子を見るのではなく、泌尿器科の受診を検討してください。

  • 尿が赤色・ピンク色・茶色に見える(肉眼的血尿)
  • 血の塊が尿に混じって出る
  • 尿潜血陽性が2回以上、繰り返し出ているが、泌尿器科を受診できていない
  • 尿潜血と尿蛋白が同時に陽性である → 腎臓内科への受診が推奨されます
  • 尿潜血陽性が出ており、男性で40歳以上、女性で50歳以上
  • 尿潜血陽性が出ており、10(箱×年)以上の喫煙歴がある
  • 過去に尿路結石になったことがある
  • 排尿時の激しい痛み、発熱を伴う血尿
  • 腰や脇腹の痛みを伴う

これらに当てはまらない、軽度な尿潜血(±や+程度)で、症状も特にないという方であっても、一度は泌尿器科で再検査あるいは精密検査を受けておくことをおすすめします。
特に女性で生理中に検査を受けてしまった心当たりがある場合は、月経終了後の再検査で結果が変わることもあります。

日常生活で意識したいこと

  • 十分な水分摂取を心がけ、尿の濃縮や結石の形成を防ぐ
  • 喫煙している場合、膀胱がんのリスク因子として知られているため、禁煙を検討する
  • 尿路結石の既往がある場合、再発予防として飲水量や食生活について泌尿器科で相談する

まとめ

  • 尿潜血陽性は、自覚症状のない「顕微鏡的血尿」を反映したものです。
  • 原因は一時的なものや、腎臓の病気、泌尿器系のがんなど、多岐にわたります。
  • 自覚症状がないことは、病気がないことの根拠にはなりません。
  • 軽度な所見であっても、自己判断で「様子を見る」のではなく、一度は泌尿器科に受診するのをおすすめします。
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この記事を書いた人

人間ドックや健診業務を中心に診療を行っている現役医師です。

「人間ドックの結果の紙、見方が難しすぎる」
「異常値を指摘されたけど、病院に行くべきか迷う…」

そんな受診者さんの疑問や不安を解消するために、このサイトを立ち上げました。「現役医師だからこそ語れるデータの読み方」と、「日常生活に取り入れたい具体的なセルフケア」を発信しています。

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