【人間ドック】クレアチニンとeGFRが「要注意」だった方へ。項目の解説と、腎臓を守るためのセルフケアをご紹介します。

人間ドックや健康診断の結果票で、「腎機能」の欄にある「クレアチニン」と「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という2つの項目を見て、疑問に思ったことはありませんか?

「どちらも腎臓の数値のようだけど、何が違うのだろう?」
「クレアチニンは少し高いだけなのに、なぜeGFRはC判定になっているの?」

結論から言いますと、これらはあなたの体の中の「フィルターの目詰まり具合」を正確に評価するための、表裏一体の重要な指標です。クレアチニンという「ゴミの量」を、あなたの年齢や性別というデータと掛け合わせて、現在の腎臓の「実質的な稼働率(100点満点換算)」として翻訳した数字がeGFRです。

この記事では、人間ドックに従事している医師の視点から、クレアチニンとeGFRの違いや測定する意味、そして忙しい日々の中でも大切な腎臓の機能を守り、数値を維持するための具体的なセルフケアについて解説します。

人間ドック学会の判定基準

ABCD
クレアチニン(男性)1.00以下1.01〜1.091.10〜1.291.30以上
クレアチニン(女性)0.70以下0.71〜0.790.80〜0.991.00以上
eGFR60.0以上45.0〜59.944.9以下

※ A:異常なし、 B:軽度異常、 C:要再検査・生活改善、 D:要精密検査・治療

※ クレアチニンの単位:mg/dL 、 eGFRの単位:mL/分/1.73m2

目次

クレアチニンとeGFRは何が違う?

一言で表すと、クレアチニンは「血液中に残ったゴミの量」、eGFRは「老廃物を除去するフィルターの現在の稼働率(100点満点中何点か)」を示しています。

クレアチニンとは:筋肉を動かした際に出る老廃物(ゴミの量)

クレアチニンは、筋肉がエネルギーを消費したあとにできる燃えかす(老廃物)です。このゴミは通常、腎臓(血液のフィルター)で100%近く”ろ過”され、尿と一緒に体の外へ排泄されます。
しかし、腎臓の働きが低下すると、ゴミを十分に排泄できなくなるため、血液中に残るクレアチニンの量が増えてしまいます。

つまり、簡単に言うと「クレアチニンの数値が高い=腎臓の機能が悪い」ということになります。

注意が必要なのは、このゴミの量は「筋肉量」に比例するという点です。
そのため、筋肉量が多い若い男性などは数値が高めに出やすく、小柄な高齢女性などは腎機能がかなり落ちていても低めに出るという特徴があります。

eGFRとは:あなたの腎臓の「現在の点数」(フィルターの稼働率)

前述のように、クレアチニンの値は、年齢や体格、性別に影響されてしまいます。
そこで、クレアチニンの値に「年齢」と「性別」の補正をかけ、「結局、あなたの腎臓は今、100点満点中何点の力で働いているのか」を計算し直したものがeGFRです。


例えば、eGFRが「60」であれば、「健康な若者と比べて、腎臓のフィルター機能が約60%稼働している」と直感的に理解して概ね問題ありません。

つまり、簡単に言うと「eGFRの数値が低い=腎臓の機能が悪い」ということになります。
クレアチニンと逆なので、注意しましょう。

なぜ健診で腎臓の数値を測るのか 〜腎臓は「沈黙の臓器」である〜

なぜ健診で全ての人が腎臓の数値を測る必要があるのかと言うと、主に2つの理由があります。

① 限界まで「自覚症状」が出ないから(沈黙の臓器)

腎臓は、機能が半分や3割まで落ち込んでも、痛みも、かゆみも、だるさなどの症状が出ません。尿の量や見た目もほとんど変わらないため、自分では気づけないのです。
「体調が良いから大丈夫」が通用しない臓器だからこそ、健診や人間ドックの血液検査で数値を測る必要があります。

② 腎臓は「一度壊れると、基本的には元に戻らない」から

腎臓のフィルターは繊細な血管の集まりでできており、一度壊れてしまうと、現在の医療では再生させることができません。
点数が20点、10点と下がり続けてゼロに近づくと、最終的には機械で血液をキレイにする「人工透析」が必要になります。
そうなる前に、「点数が下がり始めている初期の段階」でいち早く見つけてブレーキをかけること、これが健診でクレアチニンやeGFRを測定・算出する目的です。

腎機能が悪い状態を放置すると、体にどんな影響がある?

eGFRの低下が続くと、体内の老廃物や余計な水分が排泄できなくなり、全身の血管や内臓にドミノ倒し的に問題を引き起こします。

  • 慢性腎臓病(CKD)の進行: 腎臓の機能低下が3ヶ月以上続く状態。進行を止められないと、最終的には機械で血液を”ろ過”する「人工透析」を生涯にわたって受ける必要が出てきます。
  • 心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中)のリスク増加: 腎臓は血圧をコントロールするホルモンを分泌しています。腎機能が落ちると血圧が上がり、動脈硬化が進行します。その結果、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクは、健康な人の数倍に上がることが分かっています。

腎機能の低下において最も留意すべきは、「下がってしまった機能(eGFR)を劇的に回復させる魔法の薬は存在しない」という事実です。
だからこそ、現在の点数をこれ以上減らさないための早期の対策が重要になってきます。

腎機能の低下を予防するために日常生活に取り入れたいセルフケア

数値をこれ以上悪化させないための基本は、フィルターにかかる「圧力(血圧)」を下げ、フィルターを痛める「塩分」をコントロールすることです。

  • 徹底した血圧管理: 腎臓のフィルターは非常に繊細な血管でできているため、高い血圧(強い圧力)がかかり続けると簡単に壊れてしまいます。自宅での血圧を「125/75mmHg未満」を目安にコントロールすることが、腎臓の保護につながります。
  • 「まず2グラム」の減塩を意識する: 塩分の過剰摂取は血圧を上げるだけでなく、直接的にも腎機能に影響することが分かっています。日本の成人は平均で1日約10gの塩分を摂っていますが、これを「今より2g減らす」意識を持つだけでも、腎臓にかかるストレスは大きく軽減されます。
  • 水分を適度に摂取する: 水分不足(脱水)になると、腎臓への血流量が減って一時的に数値が急悪化します。喉が渇く前にこまめに水分を補給することが大切です。ただし、すでに腎機能が高度に低下している場合は水分制限が必要なこともあるため、主治医の指示に従いましょう。

まとめ:健診で「クレアチニン」や「eGFR」の値を指摘されたら⋯

  • クレアチニンは「筋肉のゴミの量」、eGFRはそれを年齢・性別で補正した「腎機能の現在の点数」です。
  • 腎臓は自覚症状がないままフィルターの破壊が進行するため、健診の数値での早期発見が不可欠です。
  • 放置すると慢性腎臓病(CKD)となり、将来的な人工透析や、心筋梗塞・脳卒中のリスクが大幅に高まる可能性があります。
  • 対策の要は「血圧管理」と「減塩」です。毎食の自炊や徹底した制限が難しい忙しい人は、塩分が正確にコントロールされた宅配食などを賢く生活に組み込むのが継続のコツになります。
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この記事を書いた人

人間ドックや健診業務を中心に診療を行っている現役医師。

「人間ドックの結果の紙、見方が難しすぎる」
「異常値を指摘されたけど、病院に行くべきか迷う…」

そんな受診者さんのリアルな不安を解消するために、このサイトを立ち上げました。「現役の現場の医師だからこそ語れるデータの読み方と、日常生活でできる具体的なセルフケア」を発信しています。

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